契約書の電子化

早稲田大学エクステンションセンター(オープンカレッジ)の
春学期の「契約書実務(和文契約)」が、先週終了しました。

次回の和文契約についての講座は、昨年同様、冬学期(1月~)を
予定しています。

また、少し先ですが、秋学期には、英文契約実務(基礎編)が開講予定です。


さて、先週の講義で「契約書の電子化」について、良い方法はないかとの
ご質問を受けました。

これには、法人代表者の電子署名をしたうえで、電子版として保存する
方法や、関連企業との間で電子決済を導入し帳票を電子化する、などが
あると回答しましたが、具体的なところまではお答えできませんでした。

そこで、少し調べてみました。

会社における契約書の電子化は、印紙税や諸経費の節約、文書管理の
簡素化などから、各会社で既に導入が始まっているようです。

ただ、法人の場合、やはり、その電子署名をどのように管理するのかとい
う難しい問題があるようです。
(どこかの会社では、電子署名をCDにのみ記憶させ、金庫保管をしている
とのこと。)

これについて、当方で特にノウハウを持ち合わせているわけでも何でもあり
ません。

ただ、システム関連各社から、電子署名による文書管理システムが提供さ
れているようです。

昔、当方が在籍していた新日鉄住金ソリューションズ株式会社においては、
「電子契約(Contracthub)(コントラクトハブ)」という名称で、電子契約全般に
ついての商品(サービス)があるようです。

ウェブページはこちら↓です。

 電子契約CONTRACTHUB(コントラクトハブ)
    -新日鉄住金ソリューションズ-


但し、当方は、(昔在籍していたとはいっても)上記サービスの内容や料金
について具体的に知っているわけではありませんので、詳細は、サービス
提供会社にご確認をお願いします。


ご参考まで。






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偽装出向

先週19日から、早稲田大学オープンカレッジにて「契約書の実務」(全4回)の講義が始まりました。

第一回目の講義の中で、偽装請負の説明に関連し、受講者の方から「出向」についてご質問がありました。

その場で説明しきれなかった点もあり、また、出向と派遣の違いを開設しているウェブサイトの中に、偽装出向の問題をきちんと説明しきれていないものも散見されたため、ここで要点を説明したいと思います。

1)出向と派遣の契約形態の違い。

これは多くのサイトで説明されている通り、
A)出向の場合は、出向元と出向先の双方との間で、労働者の雇用契約が締結されていると整理できる一方、
B)派遣の場合は、雇用契約は、派遣元と労働者の間にしか成立していないこと、
と言えます。

しかし、これはあまり重要ではありません。重要なのは、次の点です

2)出向は、業としての労働者供給にあたらない場合に限り、認められるものであり、労働者供給事業に該当する場合は、原則としてすべて違法となる。

有名な条文ですが、職業安定法第44条には、次のように規定されています。

何人も、...労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
(なお、定義上、労働者派遣事業は、この労働者供給事業には該当しない、とされています-同法第4条第6号)

つまり、業として労働者供給事業を行うことは、(労働組合が行う場合を除き)すべて違法だということです。

そして「出向」も自社の労働者を他社の指揮命令下で働かせるわけですから、それを「業」として行えば、すべて違法となります。


この点について、「出向は派遣に該当しないから派遣法の適用を受けない」「派遣に該当しないから問題はない」といった誤った方向へ導くおそれのある説明がなされているサイトがあり、注意すべきです。

確かに、出向は派遣ではありませんから、派遣法の適用はありません。

しかし、「派遣でない」=派遣法の適用がないというとと、職安法44条で禁止されている「労働者供給事業」に該当するかどうかということは、全く別の問題です。

さらに言えば、派遣は、「許可をもらえば」合法的に行うことができますが、労働者供給事業を行うことは、許可をもらうことすらできないという点をきちんと理解すべきです。



なお、出向が認められる、即ち「業としての労働者供給事業ではない」と認定を受け得るのは、次のいずれかの場合である旨の説明が、厚労省の資料に記載されています。

<以下、厚労省の資料を転記>------

○ 在籍型出向のうち、
  a) 労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
  b) 経営指導、技術指導の実施
  c) 職業能力開発の一環として行う
  d) 企業グループ内の人事交流の一環として行う
等の目的を有しているものについては、出向が行為として形式的に繰り返し行われたとしても、社会通念上業として行われていると判断し得るものは少ないと考えている。

--------

これによれば、「出向」という形をとったものであっても、上記a)~d)のいずれかの目的を持たないものを繰り返し行うことは、業としての労働者供給となり、偽装出向として違法となる可能性が大だと言えます。

この点を、出向元も出向先も共にしっかり認識し、職安法や派遣法の順守を確認していくことが必要と考えます。

BusinessLawJournal3月号を読んで

今日は節分-2月3日。

年のせいか、今年は特に時の経つのが早いように思えてなりません。

さて、本日はBusinessLawJournal の読後感想です。

3月号(2015年)の特集は、「2015法務の重要課題」
会社の法務業務は実に多様で広範ですね。
私のような契約法務一辺倒の仕事で済んでいる身からすると、企業法務
家の皆さんに頭の下がる思いです。
(同時に自分が昔企業にいた頃の大変だった記憶が蘇ってしまいます)


また、今号から 「ライセンス契約法-取引実務と法的理論の橋渡し」
 (松田俊治弁護士著)と題する連載が始まるようです。

具体的な内容は次号からのようですが、ライセンス契約の多様性に鑑み、
条項別の解説ではなく、実務上の個別の問題点を俯瞰するというアプロ
ーチのようで、実務的問題と法的理論の橋渡しをめざす、とのことです。
そして更には、ライセンス取引をめぐる体系的な「ライセンス契約法」の構
築につなげたい、とされておられます。


ライセンス契約は、クロスライセンスと、そうではないライセンスとでは、そ
の背景となる企業関係の違いに起因して、大きく異なった特徴を持つもの
だと思います。
前者における当事者は「競合関係」にあり、後者は「協業関係」にある、と
いう場合が多いからだと思います。

また、特許やノウハウのライセンスとソフトウェアやコンテンツのライセンス
も大きく異なる場合が多いでしょう。
特許やノウハウはその技術を使って新たに何かを生み出していくために、
ライセンスを受けることが多く、従ってライセンス料はその生み出された何
物かに対して、どのように課金するか、という点が重要になります。
しかし、ソフトウェアやコンテンツの場合、単体で又は他のソフトウェア等に
組み込み若しくは一緒にしたうえで、そのソフトウェア自体、コンテンツ自
体を再配布していくという使われ方になることが多いわけです。

このような多種多様な性質を有するライセンス契約につき、どこまで「ライ
センス契約法」という一つの体系的な法律論を構築できるのか。
この困難な課題に先生がどのように立ち向かうのか、次回が楽しみです。


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記事紹介/ヒアリングの工夫~ビジネスロージャーナル12月号

めっきり寒くなりました。

「今年は秋がなかった!」とぼやいている方がいると聞きました。

10月前後、通常ならとても気候の良い時期に、台風が毎週ようにやってきたせい
もあり、そして、なぜかそのあと寒気が流れ込み、急に寒くなりました。
本当に、秋がなかったかのように、すでに冬に突入している感じです。

(私は札幌出身なので、秋がないことにはまったく違和感はないのですが...)

さて、今日は、記事の紹介を一つ。
businessLawJournal12-2014.png


最近、なかなか記事の内容が濃い(と勝手に思っている)ビジネスロージャーナルから、おひとつ。

今回は、「契約審査のためのヒアリングノウハウ」と題した特集が掲載されています。

前半の弁護士さんの解説は、入門としては読む値があると思いますが、実践に使えるのかは、
その人の工夫次第でしょう。

この中で、クックパッド株式会社の法務室の方(Kさんとお呼びします)が、
詳細なチェックリストを掲載されておられました。

Kさんのおっしゃるには自分が忘れがちな事項を列挙したものがたたき台になり、
その改訂を重ねて、契約の漏れがないかのチェックに利用されているようです。

NDA、基本合意、解約合意、業務委託、コンサル、開発受託、共同開発、知財譲渡契約、
著作権譲渡契約、ライセンス契約、代理店契約、海外との契約のそれぞれについて、
「契約の基礎情報」と「契約条件」に分けて、整理されておられます。

これを見ると、実務家だなあ、という感じがひしひしと伝わってきます。

弁護士さんの描いたヒアリングのポイントもまとまっているのですが、臨場感という点では
やはりkさんのチェックリストの方が、使い出があるように思われてなりません。

企業内実務家は、自分の企業の商品、サービスを知ったいるため、細かいけれど決して無視
できないリスクの発生場所が、きっとわかるのだと思います。

それに引き換え、私のような企業経験のあるものでさえ、いったん企業を離れてしまうと、どうしても
外様になっていまい、情報の細かいところ、本当のリスク部分というものが、だんだん、ぼやけていく
ように思います。

今後も、ぜひこのような企業内法務マンの苦心の成果物を、ご紹介いただけたらな、と都合の良いこと
を思っております。

ちなみに、せこい話ですが、私の早稲田での英文契約書セミナー発展編の最終回で、私が日常
使用しているヒアリングシートを、みなさんに配布いたしました。

上記のKさんのものよりは、全然整理されてなくて、私のメモ書きみたいなものがワープロになった
程度のものですが、自分のノウハウの一部ではあるので、配布には結構勇気がいりました。

ですが、Kさんは、このような全国紙に堂々と掲載されておられる。

まさに、脱帽、です。


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契約書作成の目標

5月23日(木曜)開催の契約に関するセミナー
 「契約の基礎知識と契約条項別問題点、モデル契約の分析講座」
  (日本経営協会関西本部主催)
の準備をしています。

今回で(たぶん)14回目になりますが、レジメを見直す度に、修正したり追加したりすべき所を発見しています。

もちろん、法律も判例も変わる訳ですから、それに合わせたレジメの改定は当然といえば当然です。

でも、今回の修正は、契約書作成の意義といった非常に基本的なところで、その内容を追加すべきだと感じました。

先日、米国弁護士のFox氏が書いた「Working with Contracts」という本を読みました。



この本の最初のほうに次のような記述がありました。

「The goal of a contract is to describe with precision the substance of the meeting of two minds, in language that will be interpreted by each subsequent reader in exacrly the same way.」
(“Working with Contracts” p4, by Charles M. Fox, a lawyer in the U.S.)

契約の作成は、米国の新前弁護士などにとって極めて難しい課題となる、なぜならば、契約で最も重要な部分は、非法律的な部分だからだ」

という命題から始まるこの本は、それに続けて、上記のように、

「契約の目的は、誰が解釈しても同じ結果になるように当事者の合意内容を正確に記述すること。」

と書いています。

そして、正確に記述された契約書を作成するためには、契約当事者が、明確に、「得たいものを得るために何を諦めたのかを理解」していることが必要だとしています。
「The process of contract formation also forces the parties to understand what they must give up to get what they want.」

最近の私のセミナーでは、予測可能性を向上させることが契約作成の大きな目的だとしてしてきました。
「たとえ自分に不利な内容であろうとも、それを明確化させ予測可能性を高めることが、企業経営上重要だ」ということです。

Fox氏も、上に続けて、契約は予測可能性をもたらすものだとしています。
「This process results in more realistic expectations as to the resks and rewards of the transaction.」

ただ、Fox氏は、この予測可能性は結果であって、それを達成するには、上記のとおり、当事者の理解の「正確」な記載が必要だといっておられるようです。

この「何を諦め、何を得たのか」という理解は、その条項の意味している実際の内容が、その当事者の意図したこと「のみ」を表しているのか否か、ということを深く掘り下げて検討する必要があります。

別の意味に解釈できる余地があれば、その契約条項は、当事者の理解を正確に反映していることにはなりません。

そして、このような検討をすることによって、思わぬリスクに気づいたり、双方の不一致が発見されたりしていくことにつながりますし、曖昧さが除去される結果として予測可能性が高まるわけです。

結局、契約作成の意義ないし目的は、このFox氏の考えを加えると、次のようになるように思います。

「契約の目的は、誰が解釈しても同じ結果になるように、当事者が考えている内容を、可能な限り、洗いざらい、正確に記述する努力を重ね、用いられている用語の曖昧さを除去することにより、紛争を防止し、予測可能性を向上させること」

上記を、今回のセミナーのレジメに追記しようと思います。


-追記-
この本は、どうやら翻訳版が出ているようです。
邦題は「米国人弁護士が教える 英文契約書作成の作法」(商事法務)で、東大の道垣内先生および日立製作所法務本部英米法研究会の翻訳のようです。



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