今年もありがとうございました。

28日で、本年の業務を終了させていただきました。

本年も多くの方々から契約に関する業務のご依頼をいただき、ありがとうございました。

今年は、長引く不況・大震災と、苦難の中で終わることになりそうです。

来年こそ、良い年であることを願いたいものです。

来年は、4日から業務を開始するつもりでおります。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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民法改正~3~大村敦志「民法改正を考える」

前回のブログに引き続き、民法改正に関して最近発行された本のうち、大村敦志先生の「民法改正を考える」(岩波新書、720円+税)をご紹介します。



内田先生の「民法改正」(ちくま新書)とまったくと言っていいほど同時に(出版期日は10日違い)、東大教授で法制審議会の幹事という、内田先生と同じような立場にあり、日本民法会をリードされている大村先生が、まったく同じテーマについて書かれたという点で非常に興味をそそられました。

前にも書きましたが、岩波新書であるためなのか、本書は内田先生の本よりも「学術的」な書かれ方がなされているように思われます。

特に、民法の歴史に関しては非常に詳しく書かれています。日本民法の制定過程、ローマ法からナポレオン法典=フランス民法典のへの流れへという過去の歴史に90ページを割かれています。そのうえで、最近のヨーロッパおよび東アジア諸国での民法改正/制定の動きをもとに、民法改正の目的、改正の態様、改正の担い手という観点から整理されています。特に、改正の担い手、手続きという点にも注意を払っていることがユニークでしょう。

債権法の改正の個々の内容にはあまり言及されておらず、むしろ、債権法改正に続いて、家族法や不法行為法の改正の必要性にも言及されたうえで、最後に「財産から人格へ」という民法全体の改正の方向性を打ち出されておられます。民法が「人の法」であるという考え方を復権させることが有益だ、と述べられておられます。

最後は少し飛躍があるようにも思われますが、民法を「共和国」たる市民の法とし人間の顔をしたものにする必要があるという先生の「思い」が強く伝わってきます。

債権法の改正論議だけに終始することなく、民法が本来市民の法であったことを思い出させてくれる本です。
内田先生との切り口とは見事に異なった観点からの内容となっており、両先生間で若干の書き分けがなされたのではないかと邪推したくなります。

いずれにせよ、両先生の本は、2冊合わせても適当なボリュームと価格のものですので、是非読んでいただければと思います。

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民法改正~2~内田貴「民法改正:契約のルールが百年ぶりに変わる」

前回のブログに引き続き、民法改正に関して最近発行された本のうち、内田貴先生の「民法改正:契約のルールが百年ぶりに変わる」(筑摩書房、760円+税)をご紹介します。
内田先生は、東大教授を辞められ、法制審議会民法(債権関係)改正部会の参与として、契約法改正を推進されておられます。東大出版会から出されている民法?~?という民法の体系書はあまりに有名です。



本著では、まず、各国の市場取引に関する法およびその改正動向と、日本民法の「遅れ」、そしてその遅れが世界単一マーケット化している現状において、日本企業にとってどのようなデメリット=「コスト」が発生しているかを書かれています。

ドイツやフランス等の先進国でも近年の取引に応じた民法改正が既になされているとともに、途上国においても最新版が制定されている状況を、コンパクトにまとめておられます。この部分は、断片的な知識としてはあっても、なかなかまとめて整理・概観することは難しいものだと思いますので、とても参考になります。

そのうえで、日本民法の生い立ちと、その生い立ちが原因となって今のような「抽象的」な条文になっていること、そしてその問題点、すなわち「国民にわかりにくい」民法になってしまっている点をあぶりだし、今回の改正の方向性への記述へと展開されています。

後半では、「民法の現代化」という表題の下、「消滅時効」、「法定利率」、「約款」(これは先生のお得意の分野です)、「サービス契約」といった個々の論点を概説するとともに、「自然災害と契約法」と題して今回の東日本大震災にも触れつつ、事情変更の原則の明文化の是非について述べておられます。

ちなみに、内田先生は、事情変更の原則(契約改定権)の採用については積極論者と思われます。

この点は非常に議論のあるところだと思います。一般条項としてではなく精緻な要件提示が可能であれば、契約改定条項を入れることも可能であろうとは思いますが、契約書の使命たる「予測可能性」の向上という観点からは、問題となるように(私には)思われます。

最後に、わかりやすい民法の制定、「書いていない」民法から「多くが書かれている」民法への脱却が、日本経済の成長戦略にとって大変重要ではないかという提言をされています。なぜならば、書かれていない民法の持つ「法務コスト」はばかにならないからだ、と説明されています。

私は、本当に民法が現代化すると、日本の成長戦略に資するところがあるのかどうかは、若干疑問の余地があるかとは思います。
しかし、日本国民や日本社会の現代化という観点からは、開かれた=読めばわかる民法の制定は、非常に大切だと思われます。
「お上に任せとけばよい」という日本人特有の意識の表れの象徴が「読めない民法」であり、たとえ民法には書いていなくても学者や裁判官の言うことが「きっと」正しい、いわば「ご無理ごもっとも」的な発想がその根底にあるのではないかとも思います。

内田先生はそこまでは明記されていないようですので、これらは私自信の意見になりますが、小泉さんが首相になって以来「自己責任」が各国民に突きつけられている中で、法律特に民法のように生活に深くかかわる条項が分かりやすくなることは、自己責任を全うするためにも必須なことでしょう。
自己責任のみを要求する一方で、重要なことは「知らしむべからず」ということでは、片手落ちです。
賢い消費者、賢い中小企業を生み出してこそ初めて自己責任を問えるのだと思います。

本書を読み、民法をいち早く改正し読んでわかるものにすることは、国民の近代化という意味でもとても大事なのだと気づかされた次第です。


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民法(債権関係)改正-1


今年5月、法制審議会から「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」という民法改正に関する文書が出されています。

この民法債権編の改正、というよりは「契約法の改正」と言ったほうがより適切だろうと思いますが、明治以来ほとんど改正されてこなかった民法の契約法に関して、法制審議会の中間報告的な改正の方向性を示しているのが、この論点整理という文書です。

PDFで公開されていますのでどなたでも入手できるこの文書は、本文188ページという大部の中に63の論点が展開されています。

  →「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」


さらには、この論点整理について補足的な説明を行った「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明」という文書(本文467ページ)も出されており、各論点についての「議事の概況等」が掲載されています。

  →民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明 


民法~契約法の改正については、2009年に基本方針が出されているなど、既に数年間の検討を経てきており、ようやくその中間点にさしかかった段階にあるようです。

これを機に、二人の法制審議会委員から同じ23年10月に、相次いで民法改正についての新書が出されています。

一つ目は、民法改正のために、東大法学部教授という現職を辞し「法務省経済関係民刑基本法整備推進本部参与」となられて法制審議会民法(債権関係)部会での作業にその身をささげておられる内田貴先生の「民法改正-契約のルールが百年ぶりに変わる」(ちくま新書、760円+税)です。



二つ目は、同じ法制審議会民法(債権関係)部会の幹事をされておられる東大教授の大村敦志先生の「民法改正を考える」(岩波新書、720円+税)です。 


ともに日本民法学界をリードしてこられた先生の著書ですので、早速読んでみました。

同じ審議会のメンバーですから、内容はそれほど差異がないのではないかと思っていました。
しかし、現行明治民法制定のいきさつ等に関し多少の重複感はあるものの、切り口は相当に異なっており、2冊を読んで損をしたという感じはありませんでした。 


お二人の切り口の違いについて、少しだけ感想を述べたいと思います。

内田先生は、市場のグローバル化の中、日本民法が各国の民法改正・現代化に乗り遅れていることが、日本企業の経済取引上の取引コストを増加させており、国際競争力に悪影響を与えていることを基本的な視点とし、具体的な改正内容をいくつか紹介しながら、改正の方向性を説明されています。


一方の大村先生は、岩波新書という「学術」的な特色もあるのかもしれませんが、ローマ法、ナポレオン法その他各国民法の歴史、フランス・ドイツやアジア諸国等における最近の改正動向をかなり詳細に分析されたうえで、日本の民法改正に関し、中間論点整理等でなされているような個々具体的改正内容の説明ではなく、不法行為法や家族法、団体法等を含めたより広い視点からの「民法の存在意義」や「改正の意義」に関する議論が目につきました。 


民法契約法の改正は、両先生もご指摘になっていますが、世界市場のグローバル化と切っても切れない関係にあります。

それはすなわち、昨年発効した動産売買に関する国連条約(ウィーン条約)等から多大な影響を受けているということでもあり、今後日本民法がいかにグローバルスタンダードに近づき、より分かりやすい法典となっていくかは、まさに国際契約の作成を業としている私にとって最大の関心事とならざるを得ない、ということでもあります。

今後もし可能であれば、民法契約法改正に関する論点をいくつか拾い出し、私なりの解説と(もし可能であれば)私見を述べていきたいと思います。

次回は、まず、内田先生の本の内容についてもう少し敷衍(ふえん)してみたいと思います。 

 


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