書評「実務 契約法講義-第4版」(佐藤孝幸著、民事法研究会発行)

すっかり秋になってしまいました。
ことしは、もう30度にならないかもしれないと、気象予報士の方が言っておられました。

さて、先週水曜で、早稲田大学オープンカレッジの「英文契約実務講座~発展編」(全4回)が
ようやく終わりました。

これで、4月から始まった早稲田オープンカレッジでの英文講座(基礎から発展)までの計9回が完結したことになります。
途中、6月には、和文契約実務について、集中的に(土曜一日3コマで)行ったこともあり、計12コマ、講義を実施させていただきました。
まだ、10月に3コマ、和文契約実務の講義が残っていますが、これは6月とおなじ内容を3回に分けてやるものです。

受講生の中には、上記3講座すべてに出席された方もいらっしゃるようです。
感謝の念に堪えません。

さて、上記の英文契約実務~発展編の中でも、あるいはほかの講義の中でも触れましたが、ぜひ皆様に紹介したい本がございます。

それが、表題の「実務 契約法講義 第4版」(佐藤孝幸著、民事法研究会、4800円税別)です。


2003年の初版以降度々改訂され、第4版は2012年に発売されたもので、法科大学院での契約法の講義向けに書かれたものとのことですが、企業法務担当者や、私のような契約専門家にとっても、非常に有益な書だと私はいつも思っており、折に触れて読み返すようにしています。

そして、読み返すたびに思いを強くすることがあります。
それは、英文契約(国際契約)と国内契約の実質的同質性、ということです。

佐藤先生のこの本には、英文契約の教科書か?と思えるほど、多数の英米判例、コモンロー概念や米国統一商法典などの説明が、あらゆる場面で登場します。

私は、この本は、契約を初めて学ぶ人ではなく、契約をある程度学んで、英文国際契約に取り組む必要が生じた人向けにとって、とてつもない成果を与えてくれる、そんな本だと思っております。

この本で、佐藤先生は、契約や契約書の目的は、決して自己に有利な条項のみを勝ち取ることではなく、その取引におけるリスクがなんであるかをあぶり出し、目に見えるようにし、それを固定化することにより紛争を避け、あるいは問題が生じた場合であっても可能な限り早期に解決することにある、という視点に立脚し、日本語の契約の解説を500ページにわたって詳細に検討されておられます。
些末な学説=法解釈学にとらわれることなく、実務家として真に求められるものを具体的・実践的に記述されておられます。

そして、最も重要なことは、その内容は、国内契約だからどう、国際契約だからどう、という区別なく、およそ契約たるものこうであるべきだ、ということを前提とされておられることだと思います。

ですから、私は、この本は、和文契約の本ではなく、英文契約の本である、と考えるようになっています。

あるいは、これからの契約法務というものが、英文契約(国際契約)と国内契約の実質的同質性をベースにしていかなければならないのではないか、という問題提起そのものなのではないか、と思うようにもなっています。

企業間取引において、契約でリスクを固定化し、契約に基づいて迅速かつ見通しの良い企業経営を行い、対応策を実施していくことの重要性は、国内取引でも国際取引でも同じなはずであり、したがって、契約書に書くべきことや書き方というものは、必然的に同じ根を持ち、同じ発想で、同じ項目をつぶしていく必要があるのだと思います。

そのような視点にたって、従来の両当事者の契約外の関係に重きを置き、契約内容は形だけ、と扱う傾向のあった(特に従来型の産業における)国内取引契約は、みな改訂されていくべきだと思われます。

本書は、契約の持つ意義を踏まえて、国内契約と国際契約の同質性を、現実に各種の例を引き合いに出すことにより、見事に説明しているのだと考えます。
そのことを著者が実際に意図してこの本を書いたのかは不明ですが、少なくとも、国際契約に携わる人は、契約英語という独特な言葉の習熟のみならず、ぜひ、この本で、契約書が存在する根源的(普遍的)意味について、ぜひ学んでいただければ、非常に有益だと思います。
そして、それは、国内契約の作成や審査にも大きな影響を与えるのではないかと思います。
その意味で、本書は、国際ー国内の枠を超えた、契約実務の基本書中の基本書として位置付けて良いのではないかと、少なくとも私は考えております。

是非、法務の方や、英語が得意で海外との取引契約を任されてしまったというような方、あるいはこれから企業法務部門に配属させる方を含め、契約に専門的に携わる必要がある方には、ぜひ、手元に置いておいていただきたい、そんな本だと思います。


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