契約書作成の目標

5月23日(木曜)開催の契約に関するセミナー
 「契約の基礎知識と契約条項別問題点、モデル契約の分析講座」
  (日本経営協会関西本部主催)
の準備をしています。

今回で(たぶん)14回目になりますが、レジメを見直す度に、修正したり追加したりすべき所を発見しています。

もちろん、法律も判例も変わる訳ですから、それに合わせたレジメの改定は当然といえば当然です。

でも、今回の修正は、契約書作成の意義といった非常に基本的なところで、その内容を追加すべきだと感じました。

先日、米国弁護士のFox氏が書いた「Working with Contracts」という本を読みました。



この本の最初のほうに次のような記述がありました。

「The goal of a contract is to describe with precision the substance of the meeting of two minds, in language that will be interpreted by each subsequent reader in exacrly the same way.」
(“Working with Contracts” p4, by Charles M. Fox, a lawyer in the U.S.)

契約の作成は、米国の新前弁護士などにとって極めて難しい課題となる、なぜならば、契約で最も重要な部分は、非法律的な部分だからだ」

という命題から始まるこの本は、それに続けて、上記のように、

「契約の目的は、誰が解釈しても同じ結果になるように当事者の合意内容を正確に記述すること。」

と書いています。

そして、正確に記述された契約書を作成するためには、契約当事者が、明確に、「得たいものを得るために何を諦めたのかを理解」していることが必要だとしています。
「The process of contract formation also forces the parties to understand what they must give up to get what they want.」

最近の私のセミナーでは、予測可能性を向上させることが契約作成の大きな目的だとしてしてきました。
「たとえ自分に不利な内容であろうとも、それを明確化させ予測可能性を高めることが、企業経営上重要だ」ということです。

Fox氏も、上に続けて、契約は予測可能性をもたらすものだとしています。
「This process results in more realistic expectations as to the resks and rewards of the transaction.」

ただ、Fox氏は、この予測可能性は結果であって、それを達成するには、上記のとおり、当事者の理解の「正確」な記載が必要だといっておられるようです。

この「何を諦め、何を得たのか」という理解は、その条項の意味している実際の内容が、その当事者の意図したこと「のみ」を表しているのか否か、ということを深く掘り下げて検討する必要があります。

別の意味に解釈できる余地があれば、その契約条項は、当事者の理解を正確に反映していることにはなりません。

そして、このような検討をすることによって、思わぬリスクに気づいたり、双方の不一致が発見されたりしていくことにつながりますし、曖昧さが除去される結果として予測可能性が高まるわけです。

結局、契約作成の意義ないし目的は、このFox氏の考えを加えると、次のようになるように思います。

「契約の目的は、誰が解釈しても同じ結果になるように、当事者が考えている内容を、可能な限り、洗いざらい、正確に記述する努力を重ね、用いられている用語の曖昧さを除去することにより、紛争を防止し、予測可能性を向上させること」

上記を、今回のセミナーのレジメに追記しようと思います。


-追記-
この本は、どうやら翻訳版が出ているようです。
邦題は「米国人弁護士が教える 英文契約書作成の作法」(商事法務)で、東大の道垣内先生および日立製作所法務本部英米法研究会の翻訳のようです。



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