偽装出向

先週19日から、早稲田大学オープンカレッジにて「契約書の実務」(全4回)の講義が始まりました。

第一回目の講義の中で、偽装請負の説明に関連し、受講者の方から「出向」についてご質問がありました。

その場で説明しきれなかった点もあり、また、出向と派遣の違いを開設しているウェブサイトの中に、偽装出向の問題をきちんと説明しきれていないものも散見されたため、ここで要点を説明したいと思います。

1)出向と派遣の契約形態の違い。

これは多くのサイトで説明されている通り、
A)出向の場合は、出向元と出向先の双方との間で、労働者の雇用契約が締結されていると整理できる一方、
B)派遣の場合は、雇用契約は、派遣元と労働者の間にしか成立していないこと、
と言えます。

しかし、これはあまり重要ではありません。重要なのは、次の点です

2)出向は、業としての労働者供給にあたらない場合に限り、認められるものであり、労働者供給事業に該当する場合は、原則としてすべて違法となる。

有名な条文ですが、職業安定法第44条には、次のように規定されています。

何人も、...労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
(なお、定義上、労働者派遣事業は、この労働者供給事業には該当しない、とされています-同法第4条第6号)

つまり、業として労働者供給事業を行うことは、(労働組合が行う場合を除き)すべて違法だということです。

そして「出向」も自社の労働者を他社の指揮命令下で働かせるわけですから、それを「業」として行えば、すべて違法となります。


この点について、「出向は派遣に該当しないから派遣法の適用を受けない」「派遣に該当しないから問題はない」といった誤った方向へ導くおそれのある説明がなされているサイトがあり、注意すべきです。

確かに、出向は派遣ではありませんから、派遣法の適用はありません。

しかし、「派遣でない」=派遣法の適用がないというとと、職安法44条で禁止されている「労働者供給事業」に該当するかどうかということは、全く別の問題です。

さらに言えば、派遣は、「許可をもらえば」合法的に行うことができますが、労働者供給事業を行うことは、許可をもらうことすらできないという点をきちんと理解すべきです。



なお、出向が認められる、即ち「業としての労働者供給事業ではない」と認定を受け得るのは、次のいずれかの場合である旨の説明が、厚労省の資料に記載されています。

<以下、厚労省の資料を転記>------

○ 在籍型出向のうち、
  a) 労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
  b) 経営指導、技術指導の実施
  c) 職業能力開発の一環として行う
  d) 企業グループ内の人事交流の一環として行う
等の目的を有しているものについては、出向が行為として形式的に繰り返し行われたとしても、社会通念上業として行われていると判断し得るものは少ないと考えている。

--------

これによれば、「出向」という形をとったものであっても、上記a)~d)のいずれかの目的を持たないものを繰り返し行うことは、業としての労働者供給となり、偽装出向として違法となる可能性が大だと言えます。

この点を、出向元も出向先も共にしっかり認識し、職安法や派遣法の順守を確認していくことが必要と考えます。