NBL11.15/12.1掲載「商事仲裁判断取消事件」に関する論説について

2012年11月15日付および12月1日付のNBLにおいて、東大の唐津教授が

 「日本における国際章二仲裁判断が手続き的公序に
  反するとして取り消された事件について」
  -東京地決平成23.6.13判時2128号58ページ-

と題する論説を寄稿されておられます。

私が会社勤めをしていた時の上司が唐津さんだったこともあり、また英文契約書に毎日関与していることもあり、大変興味深く読ませていただきました。

詳細は同誌をご覧いただくとして、日本での仲裁手続きの利用がごく少数にとどまっている中、仲裁判断を裁判所の決定で<安易に>覆した本件判決は、契約当事者が仲裁手続きに期待する「迅速かつ柔軟な解決」等の効用を大きく損ない、日本の仲裁手続きに対する信頼性をさらに失う可能性のある重大な問題といえるでしょう。

アジアにおいては、シンガポール、香港等に仲裁が集中していて、日本は経済大国でありながら、日本での仲裁事例は極めて少ないのが現状です。

私は、顧客から依頼された契約書に、日本における仲裁手続きの条項を入れることが多いわけですが、契約の相手方からほとんどの場合拒絶されます。
代案として、第三国であるシンガポール等を提案すると、かなりの確率で受け入れてくれるように感じます。

日本の仲裁手続きに対する信頼性を向上させていくことと、日本民法を分かりやすいもの・予見可能性の高いものに改正していくことの二つを同時に進めなければ、日本が法的後進国だという認識を払拭させることは難しいでしょう。

同時に、唐津さんも述べておられるように、仲裁手続き、その進め方自体にも問題があったようです。
日本での仲裁事例が増えていけば、進め方もうまくなるのでしょうが、自然と増えることを待っているような悠長なことでは、どんどん世界、否、アジア諸国からも置いていかれる危険性があります。
早急に、仲裁人の知識・技能等に関する教育を制度的に拡充していってほしいと思います。

仲裁人は、「専門性が高い」という信頼感がなければなりません。
「仲裁人のたった一回の判断で妥当な結論が出る」という信頼感があって初めて、契約当事者は仲裁手続きを利用しようと思うわけです。
従って、裁判官とそん色のない法知識と経済取引に関する専門性を兼ね備えた仲裁人候補を多数育成していくことが必要と思われます。
これは、私の暴論ではありますが、民法改正によって日本民法の後進性を解消することよりも急務なのではないか、とも思われます。

既に、大企業から小企業に至るまで、企業経営にとって、国際取引が非常に重要な要素となりつつあります。
私のお客様は、多くが中小企業の方であり、それぞれが色々と苦労と工夫をされて、生き延びようとされています。
日本における法的後進性が払拭され、日本での紛争解決条項が契約に入れることができれば、それらの方々にとって、非常に大きな安心感を与えるものと思われます。
日本の国際競争力を高め、生き残りを援助するために、ぜひ、対策を強化していただきたいと思います。


コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する