不可抗力条項と地震と金銭債務

国際取引契約ではほとんどすべてに存在し、日本企業間の契約でも時々見かけまるものに、「不可抗力条項」というものがあります。

国際契約では多くの場合、具体的に不可抗力となる場合が列挙されていますので、何が不可抗力かがわかるようになっていますが、今日は不可抗力となる場合についてではなく、「金銭債務と不可抗力」の関係を考えることにします。

日本の民法の定めでは、419条において、債務不履行に関する損害賠償について不可抗力をもって抗弁とすることができない旨が定められています。
日本民法ではこの「不可抗力」という言葉を定義しないで使用していることがまず問題です。他の部分では不可抗力という用語は一切出てきませんので、その内容が何を意味しているかが具体的にわからないからです。

ただ、今日の話題に関して言えば、日本民法では、金銭債務については不可抗力による免責を受けられない、ということは明白なわけです。

これは、日本以外においても同様に(あるいはより厳格に)考えられています。
国連ウィーン条約の不可抗力条項では、金銭債務不履行について不可抗力免責の明定はされていませんが、当然と考えられているようです。

金銭債務が除外される理由として、「金銭は多少の利息を払えば必ず調達できるのであるから、不可抗力というのはあり得ない」と起草者が考えていたからだと言われています(内田民法?)。

でも、この度の地震などを考えたり、あるいはイラク紛争、中東での最近の情勢をみますと、果たして金銭債務に本当に不可抗力免責は必要ないのだろうか、と疑問に思っています。
民法の起草者が考えたように、高い利息を払えば必ず金銭を調達できる、とは言えない状況ですし、仮に現金があったとしても送金できないという状態がありうるわけですから。

あるいは逆に、今までは、不可抗力条項に「金銭債務を除く」と明記していなくても、一般的に不可抗力免責は受けられないと考えられていた同じ条項が、今後も同様に免責なしと判断されるのかどうか、疑問の余地がないとは言えないと思うのです。

立法論としてどうか、という問題もありますが、当面の契約作成において、買主側としては、金銭債務に関する不可抗力免責が認められるような条文にすべきだと思われますし、売主側としては、金銭債務が明確に不可抗力免責の対象外であることを、契約上明記すべきでしょう。

契約上最も大切なことの一つは、条項の意味、解釈の幅をできるだけ狭くすることだと思います。
買主、売主(=金銭債務者、金銭債権者)の双方にとって、金銭債務が不可抗力免責の対象となるかどうかは、できるだけ明記していくことが望ましいように思います。

なお、不可抗力条項で問題になるのは、不可抗力とされる事態が何であるか、という点ですが、これはまた別の機会に考えることに致します。


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