基本的人権の無視~ジャーナリストに対する旅券発給拒絶

外務省のジャーナリストに対する旅券発給拒絶」は、日本の行政府が、
いま、日本の将来にとって非常に危険な状態にあることを示唆すると言わざるを得ません。

ジャーナリストの安田純平氏が、外務省にパスポートの申請をしたが、拒否されたそうです。

外務省は
 「トルコから入国禁止の措置を受けたため、旅券法上パスポートの発給の制限の対象となる
という理由を記載した通知書を送っているようです。

また、NHKによれば、「個別の案件については答えられないが、それぞれの申請について、旅券法の関連規定に照らして慎重に検討している」と回答したそうです。

しかし、本当に慎重に検討したのでしょうか?
この措置は、単に、法律の規定を拡大解釈しただけのように思います。

旅券法第13条は次のように規定しています

----旅券法第13条-------
●旅券法第十三条第1項 外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。
 1.渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
 2.死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾こう引状、勾こう留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者

 (3.4.5.6号省略~一定の犯罪等が記載されている)
 7.前各号に掲げる者を除くほか、外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
----以上旅券法第13条------

外務省は、恐らく第1項を適用したものと思われます。
安田氏の申請した旅券(パスポート)の渡航先にはトルコが含まれていたのでしょう。

しかし、トルコへの入国が禁止されたから、形式的に第1号を適用するという姿勢は、いかがなものでしょう。

安田氏が言っている通り、 「トルコの入国禁止措置を理由に世界のどこにも行けなくなるというのは、憲法に保障された基本的人権を著しく制限するものだ」 といえるでしょう。

旅券法が制定された当時(昭和26年)、一般人が外国に行くことは稀でしたが、今の社会は、それとは全く違うという事情のみならず、外国に行く自由(出国の自由)は、基本的人権の一つになっていると言えます。

勿論、トルコに入国できるかどうかは、トルコ政府が判断すべきことです
しかし、トルコから入国禁止処分を受けているからと言って、何ら犯罪に加担したわけでもない(むしろ被害者である)人の出国の自由を奪う権利が、国家にあるのでしょうか?

 「法律を文理にそって解釈すれば、処分することは違法ではない」  だから
 「淡々と法律に則って処分を行う」
という考え方は、一見すると正しそうです。

しかし、第2次大戦前の日本を思い浮かべてみたとき、そこに大きな間違いがあり、大きな過ちに繋がる契機が潜んでいることを忘れてはいけません。
戦前の日本、特高警察なども、すべて法律の定めに基づきて、合法的になされたものです。
法律の規定に「形式的に」合致していたとしても、決して正しいとは限りません。

特に、上記の行政処分は、国家や行政から私人に対する権利の制限を伴うものであり、刑罰にも似た性質をもつものです。

従って、刑法の罪刑法定主義に関してよく言われるように、私人の権利を制限する処分を行う場合、そこには「謙抑性」という考え方が働くべきです。

上記の旅券法における不発給処分を行う場合の他の定めは、重大な犯罪を犯した者、旅券法に違反したものなどです。つまり、ここで想定されているのは、犯罪を犯した者を国外に出さないということです。
それを踏まえると、この第1号は、外国で犯罪などを犯して入国禁止になった者について、不発給処分を行える、と考えるべきです。

何ら犯罪に関与していない者に対し、形式論により旅券を発行しないのは、まさに、上記の「謙抑性」に反するものであり、基本的人権の尊重という憲法の理念を理解していないものと言えます。

国民が外国に行くことが稀であった法律の規定をそのままにしていることにも問題ががりますが、法律を形式的に遵守していれば、なんでもできる、という考え方は、非常に危険です。
法律の定め方は、どうしても一般的抽象的にならざるを得ません。
恣意的にその法律を運用をすることを、全て排除できるものでもありません。
しかし、いやだからこそ、政府・行政・警察機関には、この「謙抑性」ということを遵守する必要があり、また国民は常にそれを監視していかなければならないと思います。

ここには、2013年に成立した「特定秘密の保護に関する法律」の問題がからみます。
この法律により国民の監視機能が制限されており、恣意的な隠ぺいが可能となっています。
主権者たる国民の判断材料である情報を漏れなく開示し、そのうえで国民が判断していくという制度が保証されなければ、民主主義は破壊されてしまいます。
第二次大戦前、治安維持法を作って世論を合法的に」抑え込んでいった状況を作り出すことは、何とか避けなければならないと思います。憲法改正云々をする前に、このような当たり前のことを、外務省のような超のつくエリート集団が胆に銘ずべきだと考えます。



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