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「AIの時代と法」(小塚壯一郎著)を読んで

前回のブログで書きました山本康生氏の
「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」
  (講談社現代新書、l2020年1月20日刊)
に加え、学習院大学教授の小塚壮一郎氏が書いた

 「AIの時代と法
  (岩波新書2019.11.20刊)

も拝見しました。

ここには、法と技術と市場の覇権の関係について啓発的な
考察がなされていました。

前にも書きましたが、
たとえ希望しない将来像であっても、それが必然であれば、
それを受け入れた上で前へ進むしかない
ということだと思います。

AI、5Gそしてビッグデータという社会がもう現実のものとなっている
以上、それに向けた適切な契約や法律が至急必要となっています。

よく法が技術に追い付いていない、といわれていますが、
この意味をもっと正確にとらえていかなければならないようです。

勿論、例えばビッグデータの収集に関し、プライバシーの侵害と
ならないようにする、ということも大事です。

しかし、これは、ある意味で従来からの法律論のアプローチです。
新たな、しかし大きな問題は、次の2点だと思われました。
 (これは、私の整理ですので、筆者の意図と完全に一致していな
 いかもしれません)

1.-私法的論点-
  多くの、否ほとんどのビジネスがモノからサービスへ大きく
  転換するなか、従来のモノを中心とした民法や商法が、その
  ままでは適用が難しくなってきている。
  (又は適用することが不適切になってきている)

  民法の契約に関する規定は、モノの占有移転を伴う売買契約
  を中心として成り立っているが、近年のサブスクの流行の兆し
  などにみられるように、従来モノ中心だった取引の多くが、
  「サービスを受ける」ことに移行しようとしている。

  サブスクリプションやシェアリングなどに関する契約類型が存
  在せず、利用者と提供者との間の契約で取り決めがなされ
  ていない条件について問題が起こった場合、解決するための
  基準が存在しない可能性があると思われる。


2.-公法的論点-
  自動車の自動運転、ビッグデータ、ドローン、スマート家電な
  どの取り扱いなどに関し、日本やEUでは、現在、かなりの規
  制・制限が存在している。
  直接の規制ではなくとも、間接的に問題となる法律が多数
  存在し、新たなビジネスを展開するためには、多くの強行法
  の壁を超える必要があると思われる。
  これに対し、中国や米国では、これらに関する規制の少なく、
  その結果、AI、5G、ビッグデータ/クラウドを利用した最先端
  技術が、既にビジネスとして成立している。
  そのため、例えば、GAFAなどの売り上げで見ると(2018年度)
   Apple:2655億ドル(約28兆円)、
   Amazon:2328億ドル(約25兆円)、
   Google:1368億ドル(約14兆円)、
   Alibaba:548億ドル(約6兆円)
  等となっています。

  また、マイクロソフトを含め、これらの企業の時価総額は、みな
  全世界の10位以内に存在しています。
  (世界時価総額ランキング2019 ―
   World Stock Market Capitalization Ranking 2019
より)

  例えば、世界2位のAppleの時価総額は、なんと、
   1,354億ドル (約14.5兆円
  (トヨタ自動車の時価総額=196.627億ドル=約2兆1千億円

  膨大なビッグデータを処理するためには、膨大な計算能力と
  記憶能力が必要のようです。
  GAFAやBATHなどは、そのための資産と今後の資金を、既に
  確保しています。

  このような現時点での日本などの劣勢は、法律の障壁だけ
  が原因ではないとは思いますが、既に、圧倒的な差となって
  しまっているわけです。

  勿論、法律を学ぶ者として、個人の尊厳や資産をないがしろ
  にして、経済を優先するような法律を認めるわけにはいきま
  せんが、今後の日本経済が、GAFAなどに追いついていく、
  それが既に無理であっても、日本企業が食いついていくため
  にも、早期に、強行法に関する手当をしていく必要があるよう
  に思います。
  (行政でも検討しているようですが、相変わらず、もたもたして
  いるようです)


3.上記のように、法律が追いつくべき領域は広いようです。
  ただ、企業としては法律が追いつくことを座して待つような余
  裕は全くないようですので、できることを始める必要があるで
  しょう。
  また、2の強行法の分野ではなく、1の私法の分野では、企
  業としてできることがたくさんあるでしょう。
  例えば、サブスクリプション契約の中身を、どれだけ充実さ
  せられるか。
  通常の利用規約やサブスクプション(定期購読)は、主に、
  ソフトウェアや雑誌などを客体としていますが、サブスクリプ
  ション契約は、それ以外の様々なものやサービスの利用、
  購入、貸与を含んだものとして展開しています。
  自動車のサブスクであれば、高額商品ですし、大企業が提
  供するものですので、利用規約(サブスク契約)は整ってい
  ると思います。
  しかし、大手以外の企業がこの分野に参入するには、新た
  に一般消費者を相手にした合理的な利用規約を定めていく
  必要があると思われます。

  (なお、サブスクの契約類型については、
  中央経済社のビジネス法務2020年2月号及び3月号に、
  「サブスクリプション・サービスの法的留意点
  という記事(中本緑吾著)が掲載されています。

サブスクについては、私自身、更なる研究と実践が必要と感じました。


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