dutyとobligation-1

先日、とある英文契約を読んでいたら、「duty」という用語が「義務」の訳語として用いられていることに気付きました。

あれっ?と思いましたので、自分の頭の整理のためにも、「義務」にあたる英語の「duty」と「obligation」に違いがあるのかどうか、具体的には、契約書においてはどちらを使うべきかを少し調べてみました。
英文契約をこれまで随分と拝見させていただいてきましたが、当事者の「義務」という意味で、Dutyを用いているのを、私はほとんど見たことがないように思います。

なお、これまでの私が抱いていたイメージは、「duty」は法律上の義務、「obligation」は契約上の義務という感じでしたが、果たしてこれが正しかったのかどうか?

【原先生のビジネス法務基本用語和英辞典】
まず、いつも単語を調べるときに最初に拝見する原秋彦先生の「ビジネス法務基本用語和英辞典」を見たところ、なんと、obligation とdutyは義務の訳語として「併記」されているではないですか!
しかも、例文として
「have a duty of reporting to the Licensor on any unauthorized use of the Licensed Works」
(許諾著作物のいかなる無権限の使用についても、ライセンサーに対して報告すべき義務)
なるものが掲載されています。
もちろん、他の例文には、
「have an obligation to pay rents」(賃料を支払う義務がある)、及び
「assume an obligation」(義務を引きうける)
というものがあり、obligationを契約上使うことに問題はなさそうですが、最初の例のように、dutyという訳語を契約条項中に用いていいのか。
原先生には大変失礼かと思いましたが、どうも納得できず、他を調べることにしました。

【プログレッシブ和英辞典】
まず手元にある小型の和英辞典であるプログレッシブ和英辞典を見ると、その注において、

・「duty」は良心、道義心、正義感などから果たさなければならないと思うこと
・「obligation」は法律、契約、約束などに拘束されてしなければならないこと。
と書かれています。

何となく私のイメージやネイティブの作った英文を見てきた私の経験に合うと言えば合うのですが、1点、obligationが「法律などに拘束されてしなければいけないこと」となっている部分が引っ掛かりました。
最初に書きました通り、私は、dutyは、どちらかというと「法律上の義務」、obligationはどちらかというと「契約上の義務」であるというようなイメージを持っています。

【研究社和英大辞典】
次に調べたのは、いつも頼りにしている「研究社和英大辞典」です。
が、何と、そこにはdutyとobligationの使い分けの説明がありません!
その中で用いられている例から類推するしかないようなのですが、どうもはっきりしません。

【ランダムハウス英和大辞典】
そこで、最後のよりどころ、「ランダムハウス」英和大辞典の登場です。
ランダムハウス英和辞典におけるdutyと obligationの説明では、

・dutyは「良心、忠誠心、正義感、法律に従って人が行うべきこと」、
・obligationは「慣例、慣習、礼儀作法を守るために、また約束や協定を実行するために人が行わなければならないこと」

と説明されており、「法律」に従って人が行うべきことは、「duty」であると書かれていました。
ただランダムハウスの説明には、「慣例、慣習」の場合は「obligation」を使う、と書かれていますので、法的な場合においてobligationを使うことが排除されているわけではないようです。

【日本の法令の翻訳上の使用例】
それでは、実際の使用例はどうなっているかと思い、法務省の「日本法令外国語訳-Japanese Law Translation」サイトで、日本法の翻訳版を調べてみました。(但し「公定訳ではない」と書かれています。)
(同サイトのURL:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/?re=01)

日本国憲法の法務省の翻訳を見ると、
「国民の権利及び義務」=「RIGHTS AND DUTIES OF THE PEOPLE」
となっており、法律上の義務としてdutyが用いられています。
なお、憲法上の義務とは、いわゆる3大義務=納税の義務、勤労の義務、子女に教育を受けさせる義務、を指しています。

他の法令ではどうかというと、法務省の当該翻訳版を見ると、dutyが使われている場合(但し「公務員の職務」という意味でつかわれている場合も含む)もあるし、obligationが使われている場合も多数あります。そして私が見た感じでは、法令によってまちまちに思われました。

以上を踏まえ、どのように整理していくべきか、については、上記が長くなってしまいましたので、次号においてお話ししたいと思います。


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