dutyとobligation-2

前回は、dutyとobligationの用法について、考えてきました。

今日は、前回の検討を踏まえ、2点について私見を述べたいと思います。

1点目は、
「1)「duty」も「obligation」も共に法律上の義務として使っていいのか」
という点であり、

2点目は、
「2)「契約」で「duty」と「obligation」のどちらを用いるべきか?」
という点です。

まず、
1)「duty」も「obligation」も共に法律上の義務として使っていいのか

という問題の結論ですが、私のあくまでも推論ですし感覚論を出ませんが、やはり、憲法上の国民存在に関わるような根本的な道義観念に根差した義務や、古くからのあるいは固まった道徳観念・道義的観念とつながっている法律上の義務(盗むな、とか、だますな、といった義務)については、「duty」を用いるべきであるように思われます。

つまり、元々存在する道義観念や道徳の中から法律によって強制すべきであると国家が考えたものが、法律上の「義務」として規定されていることが多いわけです。
そういう場合の義務は、もともとの「良心」とか「道義」に結びついている(というより、法的な強制力を伴った「義務」は、「道徳」や「良心」の範囲の内側に存在しその一部である)わけです。
従って、ことばの本来の意味からみて「duty」が妥当なのだろうと推測できます。

だからこそ、日本国憲法で定められている国民の根本的義務の訳語は「DUTIES」とされているのであろうと思っています。

上記のプログレッシブ和英辞典の注によると、
・「dutyはそれを順守することが道義的に当然だと考えられるような場合に使用される単語だ。」
とも読めますので、その意味で、ランダムハウス大辞典と大体同じだと解釈できるかもしれません。

その一方で、法律によって初めて義務となった性質のもの、例えば「公認会計士になるためには登録を受けなければならない」というような「登録の義務(=Obligation for Registration)」(公認会計士法17条)は、道徳観念と結びついているのではなく、「免許を交付することととの引き換えに負わされた義務」というような契約的な要素を見ることができるため、obligationという訳語があてられることが多いのではないかと、私は勝手に推測しています。

但し、私のルールに当てはまらない法務省の翻訳は極めて多数ありますし、プログレッシブのように「法律上の義務」はobligationが適切としている辞書すらありますから、この点に関する私の推測は当っていないかもしれません。

少し回り道をしてしまいましたが、いよいよ、契約書作成や契約の翻訳という観点からみてより重要な

2)「契約」で「duty」と「obligation」のどちらを用いるべきか?

という問題についてです。

でもこの点については、プログレッシブもランダムハウスも、契約上の義務は、obligationだとしているわけですから、特段異論を唱えるつもりはありません。
また「obligation」にはそもそも「契約」という意味があるとランダムハウスには書かれており、契約から発生した「義務」についてはその意味からも「obligation」を使うべきでしょう。

ちなみに、動産売買に関する国連条約(ウィーン条約、CISG)の規定も検索して調べてみましたが、CISG上の「義務」はすべて「obligation」と書かれています。

以上から、契約書作成に関連して、「納税義務云々」とある条項等を除き、通常の契約上の義務を英訳する際は、「obligation」を用いるのが妥当だという結論を取れると思われました。
自分の感覚が間違いでなかったことにホッとしたと同時に、色々まだまだ調べなければならないことが山ほどあることを痛感させられました。


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