条項解説 不可抗力その2 事由列挙の必要性

先日お客様と不可抗力の話題になりました。
前回、このブログで不可抗力について書いた際には触れていなかったので、その点を補足します。

不可抗力条項について、英文契約書においては、次のように、簡単に表現している例が見られます。

Article A (Force Majeure)
"Neither party shall be liable to the other party for any delay or failure in the performance of its obligations under this Agreement if and to the extent such delay or failure in performance arise from any cause or causes beyond the reasonable control of the party affected (hereinafter called the “Force Majeure.”)"

「いずれの当事者も、本契約上の義務の履行が遅滞しまたは履行がなされなかった場合、当該遅滞または不履行が影響を受けた当事者の合理的な制御を超える事由(以下「不可抗力」という。)により引き起こされた限度において、相手方に対し責任を負わないものとする。」

しかし、この条項例には大いに問題があります。

その理由は、「不可抗力」という用語の定義が不明だからです。
何が不可抗力にあたるのか、をめぐってトラブルの原因となりかねません。

日本民法においても、同様の事が言えます。
日本民法における不可抗力の記述は、第419条に「金銭債務について債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない」とあるだけです。
この規定を反対解釈すれば、「金銭債務以外は不可抗力をもって抗弁することができる」ことになりそうです。
問題は、日本民法上に「不可抗力」の定義をした条項がないことです。

具体例をあげてみましょう。

不可抗力に、戦争や内乱、天災地変などが含まれることにはあまり異論はないでしょう。

では、「ストライキ(労働争議)」は、どうでしょうか?
また、「下請会社からの部品当の納入遅延」はどうお考えになりますか?

ストライキ(労働争議)について言えば、
「商品やサービス供給側の従業員がストライキしたことにより、商品やサービスの提供ができなくなったこと」
を不可抗力として認めて良いのかどうか、ということです。

また、下請会社からの部品当の納入遅延についていえば、
「供給側当事者が自分で選択した下請業者からの部品納入が滞ったことにより、商品の提供ができなくなったこと」
を不可抗力として認めて良いのか、という問題になります。

これらについて、不可抗力として認めるのが正しいとか、誤りだ、ということを言っているのではありません。
問題は、不可抗力の定義に入るのかはいらないのかについて、当事者間で意見が相違する可能性があること、
なのです。

契約書条項の内容は、可能な限り、予測可能性を高める必要があります。

特に、準拠法が何になるか、あるいは準拠法の内容がどのようなものであるかがはっきりしない英文契約書(国際契約書)においては、契約上の文言を明確にしておいて、最終的に準拠法がどのようになっても困らないようにしておくことが何よりも大事です。

従って、不可抗力条項については、次のように、例示を必ず加えるべきでしょう。

"(上記に続いて)........, including, but not limited to, act of God; acts of government or governmental authorities, compliance of with law, regulations or orders, fire, storm, flood, or earthquake; war (declared or not), rebellion, revolution, or riots, delay or failure of delivery from subcontractor, strike, or lockout. "

「不可効力には、以下に限定されるものではないが、天災地変、政府または政府機関の行為、法律・規則・命令の順守、火災、嵐、洪水、地震、戦争(宣戦布告の有無を問わない)、反乱、革命、暴動、下請業者からの供給の遅延または不履行、ストライキ、ロックアウトを含むものとする。」


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