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OEM-A-1 英文OEM契約(供給者側)の修正ポイント1

今回から、英文の「OEM契約」の修正例と考え方について、考えてみます。

まず、「供給者側の視点」からの検討です。

  ★  以下、英文ごとに、まず契約原案とその和訳を掲載したあと、その部分についての(筆者の)修正の考え方をご説明し、最後に実際の修正内容を掲げます。最初の英文契約原案と修正条文案の「赤字」の部分が、修正・削除の対象となる部分です。


●● OEM-A-1.  ●●
(定義)



<検討条文例>(赤字が問題箇所、又は解説中で言及した単語)

   PRIVATE LABEL MANUFACTURING AND SUPPLY AGREEMENT

THIS PRIVATE LABEL MANUFACTURING AND SUPPLY AGREEMENT (the “Agreement”) is made and entered into as of September 1, 20** (the “Effective Date”), by and between AAA Inc., a California corporation having its principal place of business at *********, CAL, ***** USA (“PURCHASER”) and BBB Co., Ltd., a Japanese corporation having its principal place of business at ******* Japan (“SUPPLIER”). (PURCHASER and SUPPLIER are hereinafter referred to as respectively the “Party” and collectively the “Parties”.)

RECITALS

A. SUPPLIER is a manufacturer and supplier of electro-mechanical components.
B. PURCHASER is a manufacturer and private label distributor of electro-mechanical components.
C. PURCHASER wishes to purchase, and SUPPLIER agrees to sell to PURCHASER, the Products manufactured by SUPPLIER, for distribution by PURCHASER under its own trademarks and trade names.

NOW, THEREFORE, with the Recitals hereby incorporated into and made a part of this Agreement, the Parties, intending to be legally bound, hereby agree as follows:


1.0 DEFINITIONS

1.1 “Products” means all Products offered for sale by SUPPLIER. Products may be added by SUPPLIER from time to time.

1.2 “Custom Products” means all Product specifically designed for PURCHASER or PURCHASER’s customers.

1.3 “Affiliate” means a company, directly or indirectly, controlling, controlled by or under common control with either Party. For the purpose of this section, “control” means to own more than fifty (50) percent of another company’s voting capital.

1.4 “PCN” means Product Change Notification.

1.5 “RMA” means return merchandise authorization.

1.6 “Contract Year” means each twelve (12)-month period commencing with Effective Date of this Agreement.

1.7 “Term” shall have the meaning set forth in Section 14.1 below.


<和訳例>(赤字が問題箇所、又は解説中で言及した単語)

   自社ブランド製造供給契約

この自社ブランド製造供給契約(「本契約」)は、20**年9月1日(「契約発効日」)に、******に本社を有するカリフォルニア州の会社であるAAAインク(「購入者」)と、******に本社を有するBBB株式会社(「供給者」)の間で締結される。(購入者と供給者は、以下それぞれを「(各)当事者」、併せて「(両)当事者」という。)


前文

A. 供給者は、電子機器部品の製造者であり供給者であり、
B. 購入者は、電子機器部品の製造者であり、自社ブランドでの販売業者であり、
C. 購入者は、購入者自身の商標と製品名で販売するために、供給者が製造した「本製品」を購入することを希望し、供給者は購入者に販売することに同意している。

以上から、本契約に統合されその一部である前文に基づき、両当事者は、法的な拘束力あるものとして、以下の通り合意する。

1.0 定義。

1.1 「本製品」とは、供給者によって販売提供がなされるすべての製品を意味する。供給者は、適宜、本製品を追加することができるものとする。

1.2 「カスタム製品」とは、購入者又は購入者の顧客のために特別に設計されたすべての製品を意味する。

1.3 「関連会社」とは、直接に又は間接的に、一方当事者を支配し、一方当事者に支配され、又は一方当事者と共同支配下にある会社を意味する。本項に関し「支配(する)」とは、別の会社の投票権付き株式の過半数を所有していることを意味する。

1.4 「PCN」とは、「製品変更通知」を意味する。

1.5 「RMA」とは、「商品返品承認」を意味する。

1.6 「1契約年」とは、本契約の発効日から開始する各12か月間を意味する。

1.7 「本契約期間」とは、下記第14.1条に規定された意味を持つものとする。


<条文の考え方>

●本契約の表題は「PRIVATE LABEL MANUFACTURING AND SUPPLY AGREEMENT」となっています。
この “PRIVATE LABEL”とは、「自社ブランド」「自社商標」という意味ですので、この表題は「自社ブランドでの製造及び供給に関する契約」となります。
自社ブランドは、製造側ではなく購入側(発注側)の商標やブランド名のことですから、いわゆるOEM(= “original equipment manufacturing”(相手先商標製品の製造)契約を意味しています。

●最初の文章の最後に「 (PURCHASER and SUPPLIER are hereinafter referred to as respectively the “Party” and collectively the “Parties”.)」という括弧書きがあります。これは、本契約中で当事者の呼び方についての定めであり、「Party」と呼ぶとされています。

ただ、日本語では「単数」と「複数」の違いが不明瞭ですので、この部分を「当事者それぞれを「当事者」と呼び、併せて「当事者」と呼ぶ。」と訳してしまうと、何を言っているのかわかりませんね。従って、訳すときは「それぞれを「(各)当事者」といい、併せて「(両)当事者」という。」といった表現にしておくべきでしょう。

   ★ なお、ここで(各)と(両)が括弧書きにしているのは、訳文中のすべての「当事者」という表記について、各と両のいずれも付けない場合もあるためです。つまり、文意から、その「当事者」が単数なのか複数なのかわかる箇所(例:「その当事者」と訳す場合など)も多く、各や両を付けると却ってわかりにくくなる、場合もあるためです。

なお、この一文は括弧書きになっていますが、かっこはなくても構いません。

●続いて「Recitals」となります。
この単語は、演奏会などの「リサイタル」と同じものですが、ここでの意味は「備考」「説明」などの意味から派生した「契約書前文」を意味します。

前文では、当事者の業務を踏まえたうえで、本契約を締結に至る経緯を記載することになりますが、通常、前文は無くても構いません。

(なお、保証契約などの片方だけが義務を負うような契約の場合、その契約を締結するに至った経緯をきちんと書かなかった場合、英米法上の「約因」がないとみなされる場合もありますので、形式的ではありますが、保証人となった経緯については記載しておくべきでしょう。約因については、次の●を参照のこと。)

●“Now, therefore,” の部分は、普通の内容とは異なった文章になっています。

通常は、
NOW, THEREFORE, in consideration of the agreements contained herein, the parties agree as follows:
といった文章であり、この中の「consideration」が、上記で触れた「約因」という意味になります。

「約因」とは、「契約を締結するに至った遠因・誘因」を意味し、英米法上、契約が当事者に対して拘束力を持つためには、この約因が存在しなければならない、とされています。

言い方を変えると、「契約当事者間に “対価関係”があること」、「契約当事者双方がそれぞれ義務を負担すること」が、契約を有効にするために必要だ、ということになります。

ただ、上記の通り、保証契約などの一方当事者のみが義務を負担する契約ではなく、本契約のように一方が製品を供給しもう一方が代金を支払うといった通常の「双務契約」では、この約因の有無が問題になることはまずありません

本契約のこの部分は、Recitals(=契約締結に至った背景)自体を約因として本契約に取り込む、という表現になっており、considerationという言葉は使われていませんが、考え方としては、同じといえるでしょう。


●次の第1条は、定義条項です。

●この中では、PCN(製品変更通知)RMA(商品返品承認)が、見慣れないものではないかと思います。

PCN」は、本製品に関する何らかの変更を行う場合における供給者からの通知を意味します。
また、「RMA」は、一定期間において商品に何らかの不具合(契約不適合)が生じた場合における供給者の「返品の保証」を意味します。但し、返品料や交換費用、再送費用などが誰の負担になるかは、その不具合が誰の責任によるものかによって変わるのが普通です。


<条文修正の考え方>

●本条については、修正する必要はないと判断しました。



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※ なお、この英文契約例の修正前の英文契約全文とその和訳は、弊所のウェブサイトに掲載されています。
以下のサイトにアクセスしてください。
 → 英文契約例
  【ご注意ください】 上記英文契約例及びその和訳は、「契約修正を行う前の素案」ですので、不適切な部分、英語や形式上の誤りなどがあり、このまま用いることはできません。くれぐれもご注意ください。



-英文・和文契約書の専門事務所-
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