民法(債権関係)改正-1


今年5月、法制審議会から「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」という民法改正に関する文書が出されています。

この民法債権編の改正、というよりは「契約法の改正」と言ったほうがより適切だろうと思いますが、明治以来ほとんど改正されてこなかった民法の契約法に関して、法制審議会の中間報告的な改正の方向性を示しているのが、この論点整理という文書です。

PDFで公開されていますのでどなたでも入手できるこの文書は、本文188ページという大部の中に63の論点が展開されています。

  →「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」


さらには、この論点整理について補足的な説明を行った「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明」という文書(本文467ページ)も出されており、各論点についての「議事の概況等」が掲載されています。

  →民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明 


民法~契約法の改正については、2009年に基本方針が出されているなど、既に数年間の検討を経てきており、ようやくその中間点にさしかかった段階にあるようです。

これを機に、二人の法制審議会委員から同じ23年10月に、相次いで民法改正についての新書が出されています。

一つ目は、民法改正のために、東大法学部教授という現職を辞し「法務省経済関係民刑基本法整備推進本部参与」となられて法制審議会民法(債権関係)部会での作業にその身をささげておられる内田貴先生の「民法改正-契約のルールが百年ぶりに変わる」(ちくま新書、760円+税)です。



二つ目は、同じ法制審議会民法(債権関係)部会の幹事をされておられる東大教授の大村敦志先生の「民法改正を考える」(岩波新書、720円+税)です。 


ともに日本民法学界をリードしてこられた先生の著書ですので、早速読んでみました。

同じ審議会のメンバーですから、内容はそれほど差異がないのではないかと思っていました。
しかし、現行明治民法制定のいきさつ等に関し多少の重複感はあるものの、切り口は相当に異なっており、2冊を読んで損をしたという感じはありませんでした。 


お二人の切り口の違いについて、少しだけ感想を述べたいと思います。

内田先生は、市場のグローバル化の中、日本民法が各国の民法改正・現代化に乗り遅れていることが、日本企業の経済取引上の取引コストを増加させており、国際競争力に悪影響を与えていることを基本的な視点とし、具体的な改正内容をいくつか紹介しながら、改正の方向性を説明されています。


一方の大村先生は、岩波新書という「学術」的な特色もあるのかもしれませんが、ローマ法、ナポレオン法その他各国民法の歴史、フランス・ドイツやアジア諸国等における最近の改正動向をかなり詳細に分析されたうえで、日本の民法改正に関し、中間論点整理等でなされているような個々具体的改正内容の説明ではなく、不法行為法や家族法、団体法等を含めたより広い視点からの「民法の存在意義」や「改正の意義」に関する議論が目につきました。 


民法契約法の改正は、両先生もご指摘になっていますが、世界市場のグローバル化と切っても切れない関係にあります。

それはすなわち、昨年発効した動産売買に関する国連条約(ウィーン条約)等から多大な影響を受けているということでもあり、今後日本民法がいかにグローバルスタンダードに近づき、より分かりやすい法典となっていくかは、まさに国際契約の作成を業としている私にとって最大の関心事とならざるを得ない、ということでもあります。

今後もし可能であれば、民法契約法改正に関する論点をいくつか拾い出し、私なりの解説と(もし可能であれば)私見を述べていきたいと思います。

次回は、まず、内田先生の本の内容についてもう少し敷衍(ふえん)してみたいと思います。 

 


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