民法改正~個別論点1「事情変更の原則」その2

先日5日にこのブログで民法改正個別論点として「事情変更の原則」の採用について、私見を少し述べました。

その後、NBL(New-Business-Law商事法務刊)の最新号(1月1日第968号)において、内田貴先生が「佳境に入った債権法改正」と題する寄稿をされており、その中で例として唯一、上記の「事情変更の原則」について取り上げておられました。

先生はあくまでも事情変更の原則採用の推進派のようで、「読んでわかる民法」「国民一般に分かりやすい民法」」を作るという信念のもと、判例や専門家に聞いて初めてわかるような「書かれていない原則」を極力明文化していこうというお考えのようです。

「事情変更の原則」の採用については、実務課からの批判が非常に強いことを意識された上で、次のような論拠をもとに、採用すべきことを説いておられます。

1)判例としては大審院時代(最高裁の前身)に既に適用例が存在し、最高裁で肯定した判例はないが下級審判決では珍しくない。

2)借地借家法11条、32条に関する最高裁の考え方の根底には事情変更の原則(ないしはドイツの行為基礎論)が存在する。

3)結果的に棄却されたが、事情変更の原則の要件を明確化した平成9年最高裁判決は、その要件が充足されさえすれば適用されていた事案であった。

4)比較法的にみると、ドイツ民法313条、フランス債権法に関する司法省草案、イタリア民法1467条、オランダ民法258条、ロシア民法451条、アメリカUCC2章615条、ユニドロワUNIDROIT国際商事契約原則6.2.1条、共通ヨーロッパ売買法草案89条、中国の最高人民法院の立法作用による採用、台湾民法227条の2、などにおいて、事情変更の原則そのものまたは類似の制度が採用されており、決して例外的な制度とは言えないこと。

5)判例法として確立され、裁判でしばしば主張されるこの原則の明文化を見送ることは、現在諸外国からの「相変わらず日本民法はブラックボックスだ」という認識を一層強めることになってしまい、国際市場における日本法の地位をますます低下させてしまう。

確かに、内田先生のおっしゃることに一理あるでしょう。

ただ、事情変更の原則を明文化するとしても、その濫用を防止するために、その要件としてどこまで具体的に明確に記述できるか、という点が非常に難しいと思われます。

また、国連ウィーン売買条約では、事情変更の法理は採用されていないわけですから、ユニドロワ(UNIDROIT)で採用されていることをもって国際的な基準として採用されていると見ることはできないと思われます。

契約の使命たる「予見可能性」を損ない、しかも契約順守が本則であるところ、契約を破る自由を与えるような規定を明文化するのですから、相当のボリュームをもった明確かつ具体的な要件を練らない限り、弊害の方が大きくなるように思われてなりません。

改正の動向を見守りたいと思います。

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