民法改正~個別論点3「特定物の危険負担における債権者主義」

私がセミナーで講義をする際に、いつも強調し【過ぎて】しまうのが、所有権移転時期の問題と、危険負担の移転時期の問題です。

現実には、このあたりのことは、契約でかなり詳しく規定される部分ですから、民法でどうなっているか、という議論にそれほど多く得ることはありません。

唯一、「不動産売買」で所有権移転時期を明記していないと、金も払ってもらっていないのに契約しただけで相手方に所有権が移転するとともに、危険負担も移転してしまう。

その結果、契約後、売主がいぜんとして管理している家に雷が落ちて全焼してしまったとしても、その家の買主は、既に所有者であるとともに、所有者であるがゆえにその危険も負担せざるを得ず、その結果、危険負担における「債権者主義」という珍しい規定が策定されたと考えられます。

結果として、「代金債務は依然として所有者側=物件に対して債権者としての立場に立つ買主が、代金をしはらわなければならない」というとても常識とはかけ離れた結論となっているわけです。

理論的には確かに、所有権移転と、危険負担の移転時期を合わせることにより、その整合性を取っているようにも見えます。

しかし、これが明治以来続いている「概念法学」の恐ろしいところで、前提となる契約と同時に所有権は移転する、という社会的な実証も、一般人の感覚もすべて無視して打ちたてたドクトリン(ドグマ)をベースに、それに論理的にのみ適合させた条項を加えていったと言えます。

しかし、現実の常識としては、契約書を交わしたからといって一円の支払いもしていない場合に、買主が当該物件を「自分のものだ」と認識することは稀でしょうし、売主としても契約だけで先方に全部が移転してしまったと考える人もまずいないでしょう。

明治民法は、学者の念頭に「大根売買」を想定して作成したものだと揶揄されます。

従って、登記がなければ対抗できない不動産物件変動に関する対抗要件主義、という原則については検討がおろそかであるばかりでなく、現実の取引を見誤っていると思われます。

ちなみに、ウィーン動産売買国連条約では、特定物、非特定物を問わず、いくつかの輸送形態に応じて細かく規定しており、

67条では「輸送を伴う場合において...危険は売買契約に従って買主に送付するために物品を最初の運送人に交付した時」に買主に移転するとされている。運送途中に売買契約が締結された場合の危険の移転を規定した68条はとりあえず除外するとし、

69条では67条68条が適用される以外の場合の、一般論として、
「危険は、買主が物品を受け取った時に、又は買主が期限までに物品を受け取らない時は、物品が買主の処分に委ねられ、かつ引き渡しを受領しないことによって、買主が契約違反を行ったときから買主に移転する。」
と規定しています。
つまり、原則は、買主が物品を受け取った時に、買主に危険が移転する、とされているのです。

通常、買主が購入した商品を受け取り、自分の「支配領域内」に置いていた際に、例えば雷が落ちて全焼してしまった、という場合には、買主としても自己の支配領域内にあったのだから、損失を自分で負担してもやむを得ない、という認識があると思いますし、それが良識といえるのではないでしょうか。

従って、日本民法も、受け取った時、あるいは、受入検査が終わった時、のどちらかを危険負担の移転時期とすべきように思われます。これは、特定物であろうとも不特定物であろうとも同じにすべきだと思います。


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