民法改正~個別論点5「契約交渉段階の不当破棄」-2

~昨日からの続きです~

「契約交渉段階の不当破棄」の点は、法制審議会民法改正部会「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」第23番目(契約交渉段階)の一つ目の論点として掲げられています。

昨日は、企業間で交渉が長期化・複雑化していること、および中間論点での問題のされ方について、概略してまいりました。
今日は少し具体的に要件を考えてみようと思います。

判例で現れた契約交渉段階での不当破棄の事例は、具体的には次のようなものです(ほんの一例であり、非常に多数の判決があります)。

1)間違いなく開発の委託をするかのようなうまい話を持ちかけておき、先方に試作品を作らせたりした経緯があるにもかかわらず、最終的には開発委託を行わなかった場合に、当該最終委託が、委託主の海外親会社が最終決定する権限を有していたことを受託側が知っていたにも関わらず、委託側企業に信義則違反があるとした例、

2)マンションを買おうとしていた歯科医師が、色々と売主に注文をつけたり、電源の増設をにおわし、売主が電源増設を実施し、歯科医に報告したのに、歯科医が反論を述べなかった等の事情の場合、歯科医側に信義則違反がある、とした例、
などです。

このような多数の判例による判示がある中で、どうやって、妥当な要件を抽出していくかがポイントでしょう。

では、この点をどう考えていけばよいのでしょうか?

情報格差のある対消費者契約や対労働者契約の場合には、情報弱者側からの突然の契約破棄は、必ずしも不当破棄とは言えないでしょうし、話が複雑になりますので、少なくともここでは除外して考えるべきだと思います。

企業間に絞った話であれば、先日の私のブログでも書いたように「どちらが情報弱者かがわからない」ことが多いと思われます。単に買主だから強い、というわけでもないと思います。

そのような中で、どのような要件のもとに、不当破棄の法理を条文化していくのか、かなり難問でしょう。

ただ、契約の不当破棄の問題は、所詮、契約上の義務の問題ではありません。

この問題は、不法行為責任の問題なわけです。
契約に付随する問題ではあるものの、契約の効果として直接出てくる問題ではありません。

従って、その要件や効果について、現在でも不法行為という漠然としたものに依拠しているわけであり、少なくとも「契約の予測可能性」の阻害の点では、とりたてて問題はない部分の論点だと言えるでしょう。

成立した契約の効力等の問題に影響を与えないのですから、従来の不法行為の枠組みの中で要件が不明確であった点を極力明確化すれば、それだけ取引やビジネスに資するのではいかと(少し乱暴ですが)思われるのです。

意見の中には「濫用」を心配する声もあるようですが、現在でも主張の論拠は「不法行為」なのですから、濫用の危険は既に存在しているわけです。
それを少しでも明確にしていこうとする取り組みは、正しい方向のように思われます。

(この点、先に述べた「事情変更の原則」とは、見解を異にしています。事情変更の原則は、一旦成立した契約の効力を変化させるところに意義があるわけであり、契約の予測可能性を低め、かつ濫用の危険が非常に大きいと思われるからです。)


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