民法改正~個別論点7「継続的契約の解除」

民法(債権関係)の改正の論点について、7番目に、「継続的契約の解除」に関する問題を取り上げます。

継続的契約の解除、期間の定めのない継続的契約の解消等に関しては、法制審議会民法改正部会の「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」第60番目に論点として掲げられています。

なお、消費者と事業者間の取引については、話が複雑になりますので、除外して考えることにします。

企業間においては多くの取引が、売買基本契約、取引基本契約、販売代理店契約や、OEM契約(製造委託契約)等の名称に基づいて、継続的になされています。
そして、そのような継続的契約の終了や解除権の有無については、各企業において関与の度合いが高いのではないかと思います。

民法においては、継続的な契約だからと言って特段の手当ては、これまでなされてきませんでした。
しかしながら、判例において、民法第1条の「信義則」の具体的な適用事例として、継続的契約に関する解除権を制限するという方向で、規制がなされてきているのが実情です。

私が会社時代に経験した苦い思い出も、継続的契約の解除に関する問題でした。
もう20年以上も前の話しとはいえ勤めていた企業の内部の話ですからあまり公けにはできませんが、かい摘んでお話ししますと、
OEM契約の相手方が、ある程度の投資をしたうえでこちらの製品を作ってくれていました。
しかし、その投資から程なくして、こちら側から、期間満了を理由とした解除の申し出を行いました。その申し出が信義に反するということで問題となってしまったという内容でした。
結局、和解で解決したのですが、当時法務の担当者であった私は、随分と怒られたものです。(本当は、私は、契約を終了させることについて殆ど知らなかったのですが...)

さて、そういった苦い思い出のある「継続的契約の解消、解除」の問題ですが、具体的な論点としては、裁判例で出ているような解除が制限される場合というものを、法文上に明記することは可能かどうか、あるいは妥当かどうか、というものです。

継続的契約の解除に関する世界的な動向としては、かなり多くの国で代理店保護法があり、代理店契約(あるいは販売店契約)について、合理的な期間を置かずに、当然に契約が終了すると規定したり、解除できるとすることは、当該保護法に違反する可能性があります。

日本においてはこの手の保護法はありません。
しかし、上の通り、実質的には判例で制限が課せられている、という実情にあります。

これを明文化することについてですが、上記のような契約類型ごとに各当事者のおかれた状況が異なるため、慎重になるべきであることは当然です。

しかし、類型別のシチュエーションをきちんと踏まえた上で、具体化・明文化することは、事業者間契約といえどもメリットがあるのではないかと思われます。

一般に、
 「事業者間の契約は、それぞれ営利のための専門家として事業を行っているわけだから、
  どの事業者であっても持てる情報に優劣はない」
という前提が、検討者の中にある程度共有されているように思います。
特に大企業相手の仕事をしている弁護士さんに、上記が当然の前提であるかの如く立論されていることが多いように見受けられます。

しかし、事業者と言ってもトヨタやパナソニックのような大会社は、ほんの少数でしかありません。
上場企業間であっても、その情報収集能力や交渉能力には差異がありますし、それ以上に取引関係における優劣も厳然として存在しています。
ましてや、上場企業対中小企業という関係では、力の差は歴然です。

従って、できるだけ類型化して且つ具体的に記載することが可能であれば、判例によって蓄積されてきた継続的契約の解消・解除権の制限に関して明文化することは、事業者間においても相当のメリットがあるように思われます。

このような規定を設けることは、「契約書上にせっかく期間を定めて予見可能性を高めたことが無駄になる」という批判もあることでしょう。

しかし、
 1)最初に見たように外国では代理店保護法も存在していて、
   継続的契約の解除制限は特殊な規制とは言えないこと、
 2)契約書の予見可能性と言っても、判例で解除が規制される
   可能性を契約所で否定することはできない以上、
   むしろ明文化したほうが予見可能性に資すると思われること、
 3)さらに、なんといっても大企業対中小企業と言う力関係が違う
   当事者間の契約である以上、不合理な解除・解約を規制する
   メリットが大きいこと、
などから、実際に起草する場合には大きな困難も伴うかとは思いますが、継続的契約の解消・解除については、一定の規制を掛けることがよいのではないかと考えています。


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