クレヨンしんちゃん中国判決に思う

中国で争われていた「クレヨンしんちゃん」の著作権侵害および商標権侵害事件につき、差し戻し審で、日本側の勝訴となったようです。

(NHK-NEWS-WEB記事)



今回は、NHKのニュースでも触れられているように、著作権のみならず「商標権」についても、中国企業側の「侵害」を認めた点に意義があるように思われます。

著作権と、特許権や商標権といった「産業財産権」(以前は「工業所有権」といっていました)とでは、権利が認められる過程に大きな違いがあります。

著作権は、多くの国で特段の方式を必要とせず、また「登録」や「登記」といった行政手続きを経ることなく自然発生的に生じる権利とされています。
しかも、全世界的に、ベルヌ条約という1886年の条約(正式には「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」といいます)において、
 「内国民待遇の原則」と
 「無方式主義の原則」
という原則が採用されており、どこの国で発生した著作権であっても、条約締結国では、自国民の権利と同様に保護され、また特段の方式を必要としないことになっています。

従って、同条約に加盟している中国では、当然、他国で成立した著作物に関する権利を尊重しなければならないわけであり、従来から海賊版DVDなどの著作権侵害物を廃棄するなどの対策(デモンストレーション的とも言われています)が採られています。

しかし、商標や特許権といった「産業財産権」の多くは、ざっくり言うと、各国とも原則として属地主義=各国独自に権利を認めることになっており、さらに特許申請等を経て権利につき国家から認定を受ける必要があります。

従って、原則論から言うと、商標権について各国独自に登録制度があり、他国で登録されているものであろうと、自国で登録してしまうことは自由にできるということになります。

ただ、それでは世界的に有名な(著名な)商標について、各国で勝手にどんどん登録され、その商標が持つ経済的な価値に「ただ乗り=フリーライド」するという不公正な結果となってしまいます。

そこで、そのような商標登録の属地主義の問題点を緩和するために、日本等では、著名な商標や周知商標については、そもそも登録が受けられないことになっていますし、さらに不正競争防止法で(登録されていないものでも)著名商標などについて第三者が勝手に使用してはならないとされています。

このように、原則論としては、商標制度は各国独自のものとなっているため、他国の著名商標等に関する保護の意識の低い国では、滅多に他国の商標権の侵害を認定することはありません。

従って、今回のように、「クレヨンしんちゃん」に関して中国企業が中国で商標登録をしたこと自体が「無効」であるとした点で、中国の知的財産権に関する意識がかなり高くなった(あるいは高くなったことをアピールしようとしている)と言えるのではないかと思います。

このような判決が継続的に出され、中国における他国の知的財産権の尊重が根付いていくことを期待したいと思います。

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