BusinessLawJournal3月号を読んで

今日は節分-2月3日。

年のせいか、今年は特に時の経つのが早いように思えてなりません。

さて、本日はBusinessLawJournal の読後感想です。

3月号(2015年)の特集は、「2015法務の重要課題」
会社の法務業務は実に多様で広範ですね。
私のような契約法務一辺倒の仕事で済んでいる身からすると、企業法務
家の皆さんに頭の下がる思いです。
(同時に自分が昔企業にいた頃の大変だった記憶が蘇ってしまいます)


また、今号から 「ライセンス契約法-取引実務と法的理論の橋渡し」
 (松田俊治弁護士著)と題する連載が始まるようです。

具体的な内容は次号からのようですが、ライセンス契約の多様性に鑑み、
条項別の解説ではなく、実務上の個別の問題点を俯瞰するというアプロ
ーチのようで、実務的問題と法的理論の橋渡しをめざす、とのことです。
そして更には、ライセンス取引をめぐる体系的な「ライセンス契約法」の構
築につなげたい、とされておられます。


ライセンス契約は、クロスライセンスと、そうではないライセンスとでは、そ
の背景となる企業関係の違いに起因して、大きく異なった特徴を持つもの
だと思います。
前者における当事者は「競合関係」にあり、後者は「協業関係」にある、と
いう場合が多いからだと思います。

また、特許やノウハウのライセンスとソフトウェアやコンテンツのライセンス
も大きく異なる場合が多いでしょう。
特許やノウハウはその技術を使って新たに何かを生み出していくために、
ライセンスを受けることが多く、従ってライセンス料はその生み出された何
物かに対して、どのように課金するか、という点が重要になります。
しかし、ソフトウェアやコンテンツの場合、単体で又は他のソフトウェア等に
組み込み若しくは一緒にしたうえで、そのソフトウェア自体、コンテンツ自
体を再配布していくという使われ方になることが多いわけです。

このような多種多様な性質を有するライセンス契約につき、どこまで「ライ
センス契約法」という一つの体系的な法律論を構築できるのか。
この困難な課題に先生がどのように立ち向かうのか、次回が楽しみです。


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記事紹介/ヒアリングの工夫~ビジネスロージャーナル12月号

めっきり寒くなりました。

「今年は秋がなかった!」とぼやいている方がいると聞きました。

10月前後、通常ならとても気候の良い時期に、台風が毎週ようにやってきたせい
もあり、そして、なぜかそのあと寒気が流れ込み、急に寒くなりました。
本当に、秋がなかったかのように、すでに冬に突入している感じです。

(私は札幌出身なので、秋がないことにはまったく違和感はないのですが...)

さて、今日は、記事の紹介を一つ。
businessLawJournal12-2014.png


最近、なかなか記事の内容が濃い(と勝手に思っている)ビジネスロージャーナルから、おひとつ。

今回は、「契約審査のためのヒアリングノウハウ」と題した特集が掲載されています。

前半の弁護士さんの解説は、入門としては読む値があると思いますが、実践に使えるのかは、
その人の工夫次第でしょう。

この中で、クックパッド株式会社の法務室の方(Kさんとお呼びします)が、
詳細なチェックリストを掲載されておられました。

Kさんのおっしゃるには自分が忘れがちな事項を列挙したものがたたき台になり、
その改訂を重ねて、契約の漏れがないかのチェックに利用されているようです。

NDA、基本合意、解約合意、業務委託、コンサル、開発受託、共同開発、知財譲渡契約、
著作権譲渡契約、ライセンス契約、代理店契約、海外との契約のそれぞれについて、
「契約の基礎情報」と「契約条件」に分けて、整理されておられます。

これを見ると、実務家だなあ、という感じがひしひしと伝わってきます。

弁護士さんの描いたヒアリングのポイントもまとまっているのですが、臨場感という点では
やはりkさんのチェックリストの方が、使い出があるように思われてなりません。

企業内実務家は、自分の企業の商品、サービスを知ったいるため、細かいけれど決して無視
できないリスクの発生場所が、きっとわかるのだと思います。

それに引き換え、私のような企業経験のあるものでさえ、いったん企業を離れてしまうと、どうしても
外様になっていまい、情報の細かいところ、本当のリスク部分というものが、だんだん、ぼやけていく
ように思います。

今後も、ぜひこのような企業内法務マンの苦心の成果物を、ご紹介いただけたらな、と都合の良いこと
を思っております。

ちなみに、せこい話ですが、私の早稲田での英文契約書セミナー発展編の最終回で、私が日常
使用しているヒアリングシートを、みなさんに配布いたしました。

上記のKさんのものよりは、全然整理されてなくて、私のメモ書きみたいなものがワープロになった
程度のものですが、自分のノウハウの一部ではあるので、配布には結構勇気がいりました。

ですが、Kさんは、このような全国紙に堂々と掲載されておられる。

まさに、脱帽、です。


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契約書作成の目標

5月23日(木曜)開催の契約に関するセミナー
 「契約の基礎知識と契約条項別問題点、モデル契約の分析講座」
  (日本経営協会関西本部主催)
の準備をしています。

今回で(たぶん)14回目になりますが、レジメを見直す度に、修正したり追加したりすべき所を発見しています。

もちろん、法律も判例も変わる訳ですから、それに合わせたレジメの改定は当然といえば当然です。

でも、今回の修正は、契約書作成の意義といった非常に基本的なところで、その内容を追加すべきだと感じました。

先日、米国弁護士のFox氏が書いた「Working with Contracts」という本を読みました。



この本の最初のほうに次のような記述がありました。

「The goal of a contract is to describe with precision the substance of the meeting of two minds, in language that will be interpreted by each subsequent reader in exacrly the same way.」
(“Working with Contracts” p4, by Charles M. Fox, a lawyer in the U.S.)

契約の作成は、米国の新前弁護士などにとって極めて難しい課題となる、なぜならば、契約で最も重要な部分は、非法律的な部分だからだ」

という命題から始まるこの本は、それに続けて、上記のように、

「契約の目的は、誰が解釈しても同じ結果になるように当事者の合意内容を正確に記述すること。」

と書いています。

そして、正確に記述された契約書を作成するためには、契約当事者が、明確に、「得たいものを得るために何を諦めたのかを理解」していることが必要だとしています。
「The process of contract formation also forces the parties to understand what they must give up to get what they want.」

最近の私のセミナーでは、予測可能性を向上させることが契約作成の大きな目的だとしてしてきました。
「たとえ自分に不利な内容であろうとも、それを明確化させ予測可能性を高めることが、企業経営上重要だ」ということです。

Fox氏も、上に続けて、契約は予測可能性をもたらすものだとしています。
「This process results in more realistic expectations as to the resks and rewards of the transaction.」

ただ、Fox氏は、この予測可能性は結果であって、それを達成するには、上記のとおり、当事者の理解の「正確」な記載が必要だといっておられるようです。

この「何を諦め、何を得たのか」という理解は、その条項の意味している実際の内容が、その当事者の意図したこと「のみ」を表しているのか否か、ということを深く掘り下げて検討する必要があります。

別の意味に解釈できる余地があれば、その契約条項は、当事者の理解を正確に反映していることにはなりません。

そして、このような検討をすることによって、思わぬリスクに気づいたり、双方の不一致が発見されたりしていくことにつながりますし、曖昧さが除去される結果として予測可能性が高まるわけです。

結局、契約作成の意義ないし目的は、このFox氏の考えを加えると、次のようになるように思います。

「契約の目的は、誰が解釈しても同じ結果になるように、当事者が考えている内容を、可能な限り、洗いざらい、正確に記述する努力を重ね、用いられている用語の曖昧さを除去することにより、紛争を防止し、予測可能性を向上させること」

上記を、今回のセミナーのレジメに追記しようと思います。


-追記-
この本は、どうやら翻訳版が出ているようです。
邦題は「米国人弁護士が教える 英文契約書作成の作法」(商事法務)で、東大の道垣内先生および日立製作所法務本部英米法研究会の翻訳のようです。



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労働者派遣基本契約の印紙貼付の要否

昨日、契約セミナーを、日本経営協会さんの主催により大阪で開催させていただきました。
多数ご参加いただきありがとうございました。

当日、出席された方から、「労働者派遣基本契約」が、4千円の収入印紙を貼付する必要のある「基本契約」に該当するか否か、についてのご質問をいただきました。

残念なことに、印紙税法の細かい政令部分について、小生の理解が不足していて、即答できませんでした。

また、ご質問された方の御名前やメールアドレス等も分からないため、この場をお借りして、ご質問への回答をさせていただきたいと存じます。


結論から申し上げますと、労働者派遣基本契約には、印紙を貼付する必要はありません。


国税庁のホームページには、印紙税法別表に関する政令部分につき、以下のような解説がされています。(国税庁ホームページより抜粋)

「 印紙税額一覧表の第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書」とは、特定の相手方との間において継続的に生じる取引の基本となる契約書のうち次の文書をいい(ます)。
(1) 売買取引基本契約書や貨物運送基本契約書、下請基本契約書などのように、営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する複数取引を継続的に行うため、その取引に共通する基本的な取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書
(2) 代理店契約書などのように、両当事者(営業者に限りません。)間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定める契約書
(3) その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約のうち、一定のもの (例) 銀行取引約定書、信用取引口座約定約諾書、保険特約書など」



※従って、労働者派遣基本契約は(委任契約としての性質を持つため)、印紙貼付対象の基本契約とはなりません。



なお、該当部分の政令全文は、次の通りです。

(政令の規定全文-印紙税法施行令26条)

第二十六条  法別表第一第七号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする。
一  特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第一第十七号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)
二  代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの
三  銀行取引約定書その他名称のいかんを問わず、金融機関から信用の供与を受ける者と当該金融機関との間において、貸付け(手形割引及び当座貸越しを含む。)、支払承諾、外国為替その他の取引によつて生ずる当該金融機関に対する一切の債務の履行について包括的に履行方法その他の基本的事項を定める契約書
四  信用取引口座設定約諾書その他名称のいかんを問わず、金融商品取引法第二条第九項 (定義)に規定する金融商品取引業者又は商品先物取引法 (昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第二十三項 (定義)に規定する商品先物取引業者とこれらの顧客との間において、有価証券又は商品の売買に関する二以上の取引(有価証券の売買にあつては信用取引又は発行日決済取引に限り、商品の売買にあつては商品市場における取引(商品清算取引を除く。)に限る。)を継続して委託するため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち受渡しその他の決済方法、対価の支払方法又は債務不履行の場合の損害賠償の方法を定めるもの
五  保険特約書その他名称のいかんを問わず、損害保険会社と保険契約者との間において、二以上の保険契約を継続して行うため作成される契約書で、これらの保険契約に共通して適用される保険要件のうち保険の目的の種類、保険金額又は保険料率を定めるもの

日本経済新聞社8月13日法務面記事(約款)

先週、北海道に里帰りをしてきました。

登別の温泉宿に宿泊しているとき、友人からのメールで、
日本経済新聞8月13日朝刊の法務面に、
ファーストサーバ事件に関連した「約款」問題に関する記事が
掲載されていることを知りました。

この件については、以前、同紙の記者から取材を受けておりました。

ありがたいことに、小生のような者の名前まで出していただき、
感謝しております。

内容の詳細につきましては、同紙をご覧ください。

約款問題は、民法改正の検討項目に挙がっていることもあり、また、
改正を担当されている内田先生が昔から多数の議論をされている部分
でもあり、NBL等の法律雑誌でも多く取り上げられているものです。

従来は、少し抽象的な問題という感じではありましたが、
今年6月のファーストサーバにおけるユーザーデータ消去事件を契機
に、約款規制がより具体的で切迫した問題になったように思います。

中国契約法などにおける「公正な約款」でなければ無効とする法律が
どこまで妥当なのか、企業対企業において、消費者契約法のような
保護がどこまで必要なのか、議論し解決していくべき論点は多いように
思います。

ただ、多くの企業がネットで営業を行っており、損害賠償義務につき
対価上限とすることは、企業存続のために合理的であり必要なもので
あると、私は思っております。